甘い甘いお菓子に釣られたら、最後。



貴方は、墜ちる所まで墜ちていくんだ。





ある人によっては絶望の道へと。
ある人によっては幸せの道へと。








 sweet + sweet = ?








久々に僕たちは一緒に夜を過ごす。


隣りに座っているディーノが「楽しい話をしてやるよ」と言って喋り出した話は、
楽しくもないし、聞いた事も無い話で…



正直言って、僕にとって退屈な話だった。




なら、こう話題を出せば、この話は終わるんじゃないのか。


そう、ふと思って、ディーノに話しかけた。



「ねぇ。それ、何の話?」
「あぁ…コレか?」
「うん」



僕が聞いたら苦笑して、教えていいのかなー…なんて言い出す。



「早く教えて」
「せっかちだなぁ…。オレのお姫様は…」
「咬み殺すよ」
「教えるから、オレを殺すな」



そう言って、ディーノは僕の方を向いた。



なぜか、真剣な顔で。



「これはな…、昔話の一つなんだ」
「昔話?」
「あぁ。ある一種のお菓子の話なんだ。
…それは人の心の奥の核質を見る事が出来るお菓子。
それを食べると、その人の本当の気持ちが見えてくるんだとよ」
「…バカバカしいね、それ」
「つか、恋人同士で食べると、お互いがお互いの本当の気持ちが判るんだって」
「ふーん……」
「一度、試してみたいなぁ…」
「へぇ……」



僕はちゃんと答えてるのに、ディーノは不満そうな顔をしていく。



「…恭弥」



頬を右手で触りながら、ディーノが僕の名前を呼んだ。



「…なに」
「話、聞いてる?」



妙に笑いながら言われると、そう言えばあまり聞いてなかったと自覚する。




「聞いてるよ、一応は」
「一応かよ…」
「だって退屈な話だし」



ふわ…と欠伸をしながら言うと、ディーノは苦笑しながら僕を抱き寄せた。



「ちょっ…!」
「退屈な話だなんてひでぇな…」
「じゃあ何?試したい訳?」
「ああ、試したい」
「バカじゃないの?本当」



「素直な恭弥の気持ちを、オレは知りたいから」




その顔があまりにも、真剣だったから…




僕は、話を早く終わらせようという計画を



止めてしまった。




「じゃあ…」
「恭弥…?」
「そんなに気になるなら、そのお菓子を僕に食べさせてみなよ」
「無理だろーが。…昔話だしさ」
「…じゃあ教えてあげるよ」




そう言って僕は抱き締めるディーノの腕を解いて、





初めて自分から口づけた。






…多分、僕はとっくに『お菓子』に釣られたかもしれない。





□END□



甘い甘いお菓子伝説を知ってる人は少ないんですよねぇ……。
えと、確かヨーロッパ辺りの昔話らしいです。