「何でお前がこんなところに…?」 +バレンタイン・デイズ+ ガイアシュ編 皆、1日自由行動になったので、好き勝手自由に行動している。 今日がバレンタインという事もあって、ルークはティアと。 旦那はアニスと。 ナタリアは一人ふらっとどこかへ出かけてしまった。 そして残ったのは俺一人。 俺はやる事はないし、でも、宿屋でじっとするのはつまらないので、 とりあえず街の中を歩いていた。 そんな時、ばったり会ってしまった。 敵である六神将の一人、アッシュに。 「何でお前がこんなところに…?」 「別にそんなことどうでもいいだろう」 「いや、そういう訳にもいかないんじゃないのか?仮にも俺たち敵同士だし、な」 俺がそう言うとアッシュはフン…と言って俺をジーっと見ている。 立場的に、俺達はこんな町の真ん中でのんきに話せる間柄じゃない。 アッシュは俺達の敵『六神将』鮮血のアッシュだからだ。 「別に俺は、お前に用事があって来ただけだ」 そう言ったアッシュは服のポケットを探っていた。 何やってんだ…?アッシュの奴……。 「ガイ」 「ん…?」 「…受け取れ!」 そう言って俺に投げてきたのは何かが入っている袋。 ご丁寧に、ラッピング付きだ。 「これは……」 「今は見るな!…というか見ないでくれ……」 と顔を赤らめながらアッシュはそう言って、クルリと後ろに向いた。 「アッシュ…?」 「うるせぇ!!何も言うな!」 俺がコレがなんなのか訊ねようとしたら、アッシュは怒鳴ったから聞くに聞き出せない。 怒鳴ってからアッシュはこの場を去っていこうとする。 「ちょ…待てよアッシュ!」 俺は、歩いて行こうとするアッシュの手を掴んだ。 「なっ……!!」 手を掴まれた事にアッシュは凄く驚いたのか、吃驚した顔で振り返った。 「離せ!!」 必死にアッシュは手を離そうとする。 しかも、うっすらだけど顔が赤いし。 あ……まてよ? もしかして今日は……バレンタインじゃないか?? じゃあ、この包装された包みはもしかして『チョコレート』? 「――ありがとう、な…アッシュ。コレ」 「!!う…うるせぇ…別に…っ」 「バレンタインだからだろ?今日」 アッシュは吃驚したような顔で俺を見る。 その顔『図星です』って言ってるのも同じなんだけどなぁ…… あえて口にはしない。 「!!」 「だからさアッシュ…これ、バレンタインのだろ?」 「そ……それは……」 「すごく嬉しい。本当にありがとう」 俺がそう言うと、アッシュは顔を真っ赤にして手を払った。 「別にそんなつもりであげたわけじゃ…ねぇよ」 「そうかそうか」 俺が笑いながらアッシュの髪を撫でると、アッシュは顔をさらに真っ赤にする。 普段なら抵抗するくせに、今日は口以外、行動は大人しい。 「……俺はこれだけを渡したかっただけだ。帰る。」 「ああ」 アッシュはそう言うと、俺に背を向ける。 俺達が一緒にいる所を他の仲間に見られるのは、アッシュはマズイと思っている。 俺の為を思って。 俺は、気にしないのに。 むしろ一緒にいたいのに。 …だからってヴァン側に行くのは、ごめんだけど。 2・3歩歩き出したかと思えばアッシュは足を止めた。 「おい、ガイ」 「何だ?」 『お前だけとは戦いたくないな』 そう言ったアッシュはスタスタと帰っていってしまった。 「アッシュ……」 俺はアッシュから受け取った小さな箱を見つめた。 綺麗にラッピングされた箱。 今日はバレンタインデー。 恋人達の記念日だ。 俺とアッシュは、お互いに思いを言った事は無い。 むしろ、そんなもの必要ない。 俺たちに想いを伝え合う言葉は必要ない。 「俺だってお前とは戦いたくないさ……アッシュ」 そう言ってアッシュから貰った箱を握りしめた。 想い焦がれる相手は、敵同士で その想いも伝えられない むしろ、この先も伝え合う事は無いのだろう でも、これから 偶然でもいい 俺達が会える日を 待つことにしよう。 「なぁ?アッシュ」 ■END■ 1月23日修正完了。 ガイアシュはベタベタしない。(パロ除く) 甘くないのが私の中のポリシーです。 微……微妙にシリアス?なバレンタインデーをどうぞ! (いらないから)