+バレンタイン・デイズ+ ガイルク編 俺がファブレ公爵の用事で出かけて、 夕方、屋敷に帰って来た時、なんだか屋敷内が騒がしかった。 なんだ?と思って声がする方へ行ってみると…
「厨房…か?」
厨房の入口には数多くのメイドと公爵家ご自慢の騎士団の団員がちらほらいた。 皆、心配そうに厨房の奥を除いていて……
「…皆して何してるんだ?」
人ごみの後ろに移動した俺が前にいるメイド (女性恐怖症なので、少しだけ間合いをあけているけど) に声をかけると、メイド達が「きゃっ」と驚いた声を出して俺の方に振り返った。
「ガっ…ガイ!いつ帰って来たの?」
ものすごく慌てた状態で、メイドが俺に聞いて来る。 俺が答えようとしたその時……
「わ――!!」
厨房の中から聞こえてきたのはルークの叫び声。 そして、何かが凄い音をたてて次々と落ていく音。
……また、何かやらかしたな?
「ルーク…か。アイツ、何やってるんだ?」 「内緒です!絶対にガイには教えられません!」
俺が聞いた瞬間にメイド達は首を横に振る。 …教えられないようにルークにでも命令されたのかな?
「だから大人しく、自分の私室にでも行っちゃって下さい!!」
「どうして?」と内容を聞こうとしたら、メイド達がこれまた凄い剣幕で俺に叫ぶ。 耳が痛くなるぐらいの大声で。
「いや…でもさ、中でルークが何しでかしているのかが…」 「…やっぱりルーク様が言っていた事と同じ展開になりましたわね…」
俺が話している途中で1人のメイドがぽつんと呟いた。 ルークが言っていた事と同じ……?
「しょうがないです…。団員さん達!!」
メイドがそう言って指をパチンと鳴らすと、近くにいた公爵家の騎士団が俺を捕まえた。
「なっ…ちょっと…!」 「それじゃあ、私室まで運んじゃって下さいな」
抵抗しようにも鎧相手の人間には、生身の人間の抵抗にはビクともしない。 俺を捕まえた騎士団の団員はうなづいて、俺を引きずるように運んで行く。
はぁ…… …いったい、ルークはなにやってんだか。
運ばれていく時に団員から聞き出すと、何やらルークが皆に
『俺を絶対に厨房に入れるな。入ろうとしたら無理やりでいいから私室へ連れて行け。』
と命令したらしい。 外に出ようとも外に団員が見張りをしていて出られないし… (おそらくルークの命令なんだろう) ペールも後数日間、奥様の薬捜しに出かけて帰らないし。
本当、とてつもなく暇だ……。
… ……
…ん? 外から声がする。 この声は…ルーク?
しばらくしてから、ドアをノックする音がした。
「俺のご主人様ならドアをノックする必要ないだろ?」 「う……まぁ、そうなんだけどさ」
やっぱり部屋にやって来たのはルークだった。 俺に監禁命令出した張本人なのに、なんでそんなにぎこちないんだろうか
ルークはゆっくりと俺の方へ近づいてくる。 後ろに何か隠しながら……。
「あ…あのさ…ガイ」 「ん?なんだルーク」
ルークは俺の目の前までやって来ると…
「これ!」
そう言って後ろに隠してある物を俺の前に差し出した。 それは無道さに包装された一つの箱で…… 「これは……」 そう言って箱を見ていたら、ルークは顔を赤くして俯いた。 「今日……バレンタイン…だから」 「バレンタイン…?」 バレンタインって……女の子が好きな男の子にチョコを渡す、あの日か…? 「あ、あのさ…バレンタインって一番好きな人にチョコレート渡す日なんだろ? …そう母上から聞いたからさ…」 そう言ってルークはますます顔が赤くなっていく。 「だから…一番大好きな人に…ガイに…その…」 ルークはそう言って俯いてしまった。 たぶんルークは、渡すのは女の子だって事までは聞かされていなかったのだろう。 まさか、あげる人がいるとは奥様も思いもしてなかっただろうし。 『俺』という存在はルークの中ではとても大きいんだろうな。 『ルーク』という存在も俺の中では物凄く大きい。 あんなに必死で、俺なんかの為にチョコレート作ってくれて…… どうしようもなく…嬉しい。 「――ルーク」 「え…?」 俺は俯いてるルークの手を自分の方へ引っ張って、抱きしめた。 ルークが驚いた顔をしたけど、そんなの気にしない。 「ガ…ガイ…!?え…と」 「ありがとうな。すごい嬉しい」 耳元でそう言うと、ルークは「う……」って言って何も言わなくなった。 俺はルークを抱きしめながら、丁寧に、包装を取る。 そして箱を開けると、中には色々な形のチョコレートが入っていて…… 俺は、そのチョコレートを少し割って、口に入れる。 口の中に入ったチョコレートは、とても甘くて…… 多分、砂糖の配合間違えたんだろう。 「ちょっと甘すぎだな」 「え!?」 「ルークも食べてみるか?」 「うん…」 ルークは驚いた顔でチョコレートを少し割って食べる。 「う…甘……」 「な?」 ルークもさすがの甘さにやられたようだ。 でも俺は、そういう甘さはあんまり気にしないんだけどな。 ただ、ちょっと言ってみたかっただけ。 「なぁ、ルーク」 「何?」 「ありがとう」 俺がルークにそう言うと、ルークは恥ずかしそうに、上目使いで俺を見た。 見つめあうと俺達は笑った。 俺はさらに抱きしめる腕に力を込めた。 そしてもう一度ルークの耳元に口を近づけた。 −ルーク、愛してる……− そう言って俺は、ルークに軽く口づけた。 『それは、恋人達の甘い甘いひと時…』 ■END■ 1月23日修正完了。 どうでしょうか?バレンタイン時に書いた産物です。 読み直していたら、やっぱり日本語表記がおかしかった所を見つけ 一人ショックを受けながら、書き直していました。 ……今度はどうでしょうか??間違ってたりしない様に祈りつつ…… おまけは手直し無しでそのままにしてあります。 それでは下のおまけをどうぞ…… ++おまけ++ ガイ(以下ガ)「そういえば、今年は去年みたいに俺にチョコレートくれるやつ、 一人もいなかったなぁ……」 ルーク(以下ル)「あー、その事?」 ガ「何だ、ルーク。何か知ってるのか?」 ル「俺が、使用人みんなに “今年は俺がガイにあげるんだから、皆、絶対にガイにあげるなよ!!”って命令した」 ガ「へぇ…」 ル「後ついでに、“ガイは俺のモノだから!!”も付け加えておいた」 ガ「……そうですか」 ガ『……ルークってもしかして、独占欲強いのか?』 ル「…ガイ?」 ガ「っていうか、違うだろ?ルーク」 ル「何が??」 ガ「ルークが俺のモノなんだよ」 ■END?■ これが書きたかったんですよ!!奥さん!!!本当は!!! …はっ!!?(-д-) トリップしてしまった…(危険)