++夢鬱原型処遇++
目的地に着くまでは、ずっとルーク達はタルタロスで時間を過ごしていた。
各自各々と時間を過ごしていき、夜がやってくる。
皆が寝静まった夜遅く、ルークは眠れないで起きていた。
理由はわからない。
もしかすると慣れない土地では寝つきが悪いのかもしれない、
そんな事をを考えている時に誰かが部屋を出る音が聞こえた気がして
ルークは皆を起こさないように静かに、相手の後を追うように部屋を出ていった。
足音は甲板に出たらしく、ルークも後を追っていく。
誰なんだろうと思いながら、歩いていくと甲板の所に一つの影があった。
よく見ると、見覚えのある人物のシルエットが見えてくる。
誰なのか確信したルークは、その人物の元へと近づいた。
「イオン・・・なにやってんだよ」
「ルーク・・起きていたのですか…?」
「まあな。最近ずっと寝つけなくてさ」
タルタロスの甲板にいた人物はイオンだった。
イオンの言葉に、ルークはここに来た簡単な理由を説明する。
「一人で起きてたら、誰かが部屋を出る音がしたから誰だろうって思ったよ」
「すみません…ルーク。
実は僕も眠れなかったので、ここで暫く夜風に当たろうと思いまして」
イオンは苦笑しながらルークに謝ってきた。
ルークは、別に怒っていねぇし気にすんなよ。言いながら、イオンの隣りへと移動した。
「何か・・・あったのか?イオン」
甲板から見える、輝く星空を見ながらイオンはルークに静かに呟いた。
イオンは首を横に振る。
「僕は…これからのことを考えてたんです」
「これからの事?」
「ええ」
ルークが不思議そうに聞くと、イオンは頷いた。
「これから僕達はどうなってしまうのかって思ってしまったんです」
予言が外れた今、自分達は・・・この世界はどうなってしまうのか、と。
レプリカの自分は、これから先どうなってしまうのだと。
イオンはルークにそう言った。
「これからの事なんて、何も解かるハズないだろ?イオン」
潮風を浴びながら、ルークはイオンに向かって言う。
イオンはルークの言葉に驚きはした。
でも、心の中は、ルークの言葉が認められない自分がいた。
「ええ・・・でも」
「イオンはいつも考えすぎだと俺は思う」
イオンがルークに意見を言おうと、振り返ると、ルークは真剣な顔をしていた。
真剣な顔で、ルークはイオンに「考えすぎ」と発言する。
一瞬、何を言われたのか分からない。
でも、イオンが言おうとした意見を、
ルークは否定しようとしている事だけイオンにも分かった。
「僕が・・・考えすぎ?」
イオンはルークを見る。
分からない。
自分が考えすぎなんだとルークが言うのを。
「ここで考えてても、先へ進まなきゃ何が起こるなんてわからないだろ?」
…もっともな意見を言われた。
どうして、今の状況ばかり考えていて、先の事を考えずにいたのか。
イオンは自分を心の中で責める。
自分がルークと一緒にいない間に、彼は、かなり辛い思いをしていったんだろう。
…なんて自分は愚か者なんだ。
そう、イオンは思った。
「はい・・・そうですねルーク。…ルークの言うとおりだ」
「だろ?な、それでいいんじゃないか?」
ずっと真剣だったルークの顔は、最後の方は笑顔だった。
ルーク自身もイオン相手に自分が思っている気持ちが上手く言えたのか分からないけど、
だから、精一杯のこの言葉で察して欲しい。
ルークはそう思ってイオンを見つめていた。
イオンは考え抜いた答えをルークには話さなかった。
自分自身で考えた末にイオンがルークに向けたのは、ルークと同じ微笑み。
それで、ルークも感じ取ってくれていたのだろう。
ルークは「ふぁ〜ぁ」とあくびをしながら、イオンに問い掛けた。
「さ、もう寝ようぜ?明日だって何が起こるかわからないし、な?」
「はい!」
ルークの提案をイオンは快く受け取った。
心なしか悩みが薄くなると、あれだけ眠れなかった筈なのに、
すんなりと眠気が襲ってくるのだ。
2人は自分達の部屋へと歩き出す。
「ルーク・・・」
先を歩いていたイオンがルークの名前を呼んだ。
ルークが不思議そうに返事を返すと、イオンは足を止めた。
ルークも一緒に足を止める。
「何だ?イオン」
なぜ、今自分がイオンに呼ばれたのかが、分からない。
前にいるイオンの後姿からは、
この後ルークへ何を言うのかは全くと言っていいほど見当がつかない。
「―ありがとう―」
振り返って普段違う微笑みでルークに言う、"ありがとう"と言う言葉。
いきなり言われて、ルークは驚いた。
そんなルークを見て、イオンは、笑った。
ルーク自身は、自分の今の態度が面白かったからイオンは笑っていたのか?と思っていた。
ありがとうと言って、前に振り変えるイオンの後ろ姿を見た時、ルークは目を疑った。
イオンの姿が薄く、ぼんやりとした姿になったのだ。
"まるで、今すぐにでも消えてしまいそうな、儚い存在みたいに"
「・・・っイオン!!」
「え・・・?」
いきなり大声で名前を呼ばれてびっくりしたイオンが振り返ろうとした時、
ルークはイオンを抱きしめていた。
……無意識に。
「ルーク、どうしたんですか?」
いきなり抱きしめられた理由がイオンには分からない。
あまりにも唐突で。
腕には力が込められていて。
そして…微かに震えていた。
「イオンが…」
「え…?」
「イオンが今すぐにでも消えてしまいそうな感じがしたから・・・」
ルークはさらに少し力を入れてイオンを抱きしめる。
俺から消えないでくれ…そう思いながら、離れてしまわないように抱きしめているのだ。
その行動がイオンにとってどれだけ救われたのか、ルークはおそらく気付かない。
自分の居場所は、少なからず、『ココ』にある。
…そう分かったから。
「大丈夫ですよ・・・ルーク。僕はここにいますから、ね?」
そう言って自分の手をルークの腕にそっと置いた。
一瞬、ルークの腕がビクっとした。
『イオンはそう言ってるけど、俺は、いつかイオンが俺の目の前からいなくなってしまう。
・・・そんな感じがする』
そんな気持ちがルークの心に広がっていた。
予知なのか、それとも偶然なのか。
ルークには分からない。
「ルーク、さあ帰りましょう」
「ああ・・・」
イオンがゆっくりと手を離す。
ルークは抱きしめた腕の力を解いた。
自分の腕から離れていったイオンを心配するルークを元気付けるように微笑むイオン。
『明日は何が起こるかわからない』
自分でそう言ったはずなのに、急に、明日が来るのが恐くなる。
ルークはそう思いながら、イオンと一緒に部屋に戻っていった。
さっきみたいに消えて欲しくはないと心から思いながら……
□END□
2006/01/15修正。
修正しました。
何か、もう修正の領域を超えちゃってるんですが(笑
日本語表記がおかしい、誤字脱字はっけーん!は見逃してください。
ぶっちゃけ水乃は国語が大嫌いです。
比喩表現とか擬似法とかなにそれ?な10代後半なんです。